「土地を貸したいけど、一度貸してしまうともう戻ってこない」と考えている人はいまだに多いはずです。
しかし、今は土地の借地権を更新なしの定期にできます。
その定期にできる借地権とは「定期借地権」です。
定期借地権で土地を貸せば更新がないため、存続期間満了後に土地が返ってきます。
しかし、定期借地権には3つの種類があり、内容や違いを理解しておかなければいけません。
自分にあった土地の貸し方を見つけるためにも、3種類の違いを理解しておきましょう。
本記事では、定期借地権の概要や3つの種類、メリット・デメリットを解説します。
定期借地権とは?概要について解説
定期借地権とは、1992年8月に施行された借地借家法により生まれた借地権です。
定期借地権には、次のような特徴があります。
- 定められた期間で契約が満了する
- 定期借地権の種類は3つ
定期借地権を利用するときには、まず概要を理解しておかなければいけません。
ここからは、定期借地権の概要について解説します。
定められた期間で契約が満了する
定期借地権は、定められた期間で契約が満了します。
普通借地権は借地人に借地権解約の意思がなければ、永年更新される権利です。
しかし、定期借地権は契約期間を定め、期限が到来した場合には自動的に権利は失効します。
つまり、定期借地権は期間が満了した場合、更新ができないということです。
定期借地権は更新できないため、一定の期間満了後には土地が返ってきます。
そのため、地主は安心して土地を貸し出せます。
また、定期借地権を利用すれば、借地人は少ない費用で住宅を所有することが可能です。
通常であれば、住宅を所有するためには土地を購入しなければいけません。
しかし、定期借地権を利用すれば建物建築費と、借地料と保証金を払うだけで住宅の建築が可能です。
定期借地権は貸主、借地人ともにメリットがある権利といえます。
定期借地権の種類は3つ
定期借地権には、次のような3種類の権利があります。
一般定期借地権 | ・借地期間が50年以上の定期借地権・期間満了時に借地人は原則として建物を解体し土地を返還する必要がある |
建物譲渡特約付借地権 | ・契約後30年以上経過したときに地主が借地人の建築した建物を買い取る定期借地権・建物の買い取りと同時に定期借地権は消滅する |
事業用借地権 | ・借地期間10年以上5020年未満以下と定め事業用に建物を建築するための定期借地権・事業用の場合しか利用できない権利であり住宅建築には使えない |
表のように定期借地権といっても、権利には種類があります。
それぞれの内容を理解し、自分にあった定期借地権の種類を選択し土地を貸しましょう。
定期借地権の種類は?3タイプの特徴を解説
定期借地権には、次のような3種類のタイプがあります。
- 一般定期借地権
- 建物譲渡特約付借地権
- 事業用借地権
それぞれのタイプは内容が異なります。
内容の違いを理解し、土地を貸すときにはどのタイプを選択したらよいのか判断していきましょう。
ここからは、3つのタイプの詳細について解説します。
一般定期借地権
一般定期借地権の特徴は、次のとおりです。
名称 | 一般定期借地権 |
存続期間 | 50年以上 |
内容 | ・下記の内容の特約は有効1.更新の定めをしない2.建物再築による存続期間の延長をしない3.建物買取請求権を行使しない |
契約期間満了時の借地人がすべき対応 | ・借地人は建物撤去し更地で返還しなければいけない |
契約方法 | ・公正証書などの書面で契約 |
一般定期借地権には、更新の定めがなく買取請求権がありません。
そして、50年以上という長期間の契約であり利用目的制限もないため、借地人が借りやすい権利といえます。
一般定期借地権はさまざまな場所で利用されており、定期借地権の分譲マンションや分譲住宅にも用いられています。
事業用定期借地権
事業用定期借地権の特徴は、次のとおりです。
名称 | 事業用定期借地権 |
存続期間 | 10年~50年未満 |
内容 | ・下記の内容の特約は有効1.更新の定めをしない2.建物再築による存続期間の延長をしない3.建物買取請求権を行使しない |
契約期間満了時の借地人がすべき対応 | ・借地人は建物撤去し更地で返還しなければいけない |
契約方法 | ・公正証書等で契約しなければならない |
事業用定期借地権は、事業目的で利用するための借地権です。
事業は短期間のサイクルで行われるため、存続期間が10年以上という短い契約存続期間が認められています。
2007年までは最長20年以下でしたが、2008年1月に借地借家法が改正されて最長50年未満の事業用定期借地権が認められるようになりました。
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権の特徴は、次の表のとおりです。
名称 | 建物譲渡特約付借地権 |
存続期間 | 30年以上 |
内容 | ・契約後30年以上経過したときに借地人が建築した建物を地主が買い取る・建物買取が完了したと同時に借地権は消滅する |
契約期間満了時の借地人がすべき対応 | ・借地人は建物を地主に売却する |
契約方法 | ・法律上の制限はないため口頭でも成立する・実務上は30年経過後に売却する建物の仮登記をおこなう |
建物譲渡特約付借地権は、30年以上経過した借地上の建物を地主が買い取ることができる借地権です。
地主は建物を「買い取ることができる」と定められているため、必ず買い取るという必要はありません。
また、建物譲渡特約付借地権で定めた存続期間が満了してしまうと自動的に借地権が失効するため、引き続き借地上の建物を利用したいときには、新たに賃貸契約もしくは再度定期借地権契約をしなければいけません。
定期借地権のメリットは?種類別に解説
定期借地権にはメリットがあります。
しかし、定期借地権のメリットは種類の違いにより異なります。
どの種類の定期借地権で土地を貸すのかは、種類ごとのメリットを比較し判断していきましょう。
ここからは、定期借地権のメリットについて種類別に紹介していきます。
一般定期借地権のメリット
一般定期借地権のメリットは、次のとおりです。
- 長期間契約できる(最低50年)
- 契約の更新がなくライフプランが立てやすい
- 建物の利用目的に制限がない
【長期間契約できる(最低50年)】
一般定期借地権は長期間の存続期間を設定するため、安定して借地料を得られます。
使う予定がない土地であれば、一般定期借地権として貸して収入を手にするのがよいでしょう。
【契約の更新がなくライフプランが立てやすい】
契約の更新がないため、一般定期借地権の期間が切れてからどのように土地を利用するのか検討しやすくなります。
子供のために家を建てる、自宅を建築するなどのライフプランを立てられます。
【建物の利用目的に制限がない】
借地人から見れば建物の利用目的に制限がないのもメリットです。
土地によって有効的に活用できる方法は異なるため、土地にあった建物を建築できるのは大きな利点といえるでしょう。
事業用定期借地権のメリット
事業用定期借地権のメリットは、次のとおりです。
- 契約期間を10年~50年の範囲で自由に設定できる
- 事業計画に合わせて、柔軟に契約を設定できる
- 初期費用を抑えやすい
【契約期間を10年~50年の範囲で自由に設定できる】
事業用定期借地権は、存続期間の設定を比較的自由にできます。
事業にはさまざまな種類があり、収益は上げやすいが時代背景に影響を受けやすいものや長期間地域に根ざして運営するものもあります。
それぞれまったく違う事業年数になるため、存続期間を設定しやすいのはメリットです。
【事業計画に合わせて柔軟に契約を設定できる】
事業用定期借地権は、比較的短い期間を設定できるのがメリットです。
事業は経済や地域的要因に影響を受けるため、長年同じ場所で営業できるかわかりません。
そのため、短期間で売り上げを上げて撤退、よりよい場所に出店を繰り返します。
【初期費用を抑えやすい】
事業者からすれば、土地を購入せずに出店できるため初期費用がかかりません。
初期費用が抑えられれば出店もしやすいため、多くの企業が事業用定期借地権を利用しています。
建物譲渡特約付借地権のメリット
建物譲渡特約付借地権のメリットは、次のとおりです。
- 契約期間は30年以上
- 契約が完了した後は建物を買い取ってもらえる
- 継続使用を請求することもできる
【契約期間は30年以上】
建物譲渡特約付借地権の存続期間は、30年以上の設定が必要です。
しかし、一般定期借地権に比べて短い期間を設定できるため、建物を買い取る前提であれば短期間貸しが可能になります。
【契約が完了した後は建物を買い取ってもらえる】
借地権の存続期間が過ぎたとしても、借地人が建築した建物を利用したいケースもあるはずです。
たとえば、借地人が定期借地権の賃貸物件を建築し、地主がその賃貸物件を引き継いで不動産賃貸業をしたい場合などです。
しかも、このような場合は地主だけでなく借地人にもメリットがあります。
本来、定期借地権の期間が満了した場合は、借地人は建物を撤去しなければいけません。
しかし、建物譲渡付借地権で建物を買い取ってもらえば、現金を手にすることができます。
【継続使用を請求することもできる】
建物を買い取ってもらえないとしても、賃貸借契約を締結することで継続使用も可能です。
建物譲渡特約付借地権は比較的存続期間が短いですが、このように引き続き借地を利用することもできます。
定期借地権のデメリットは?種類別に解説
定期借地権には多くのメリットもありますが、一部のデメリットもあります。
デメリットについてもメリットと同じく、定期借地権の種類ごとで異なります。
定期借地権で土地を貸すときには、デメリットも理解したうえで進めていきましょう。
ここからは、定期借地権で土地を貸すときのデメリットを種類ごとに解説します。
一般定期借地権のデメリット
一般定期借地権のデメリットは、次のとおりです。
- 契約の更新がない
- 契約満了後は建物を更地にする必要がある
- 必ず長期的な契約になる
【契約の更新がない】
普通定期借地と違い定期借地権には更新がないため、いずれは土地を地主に返さなければいけません。
しかし、更新はできないものの再契約は可能です。
【契約満了後は建物を更地にする必要がある】
一般定期借地権は契約満了後に建物を更地にして返還しなければいけません。
建築した建物の規模が大きいと相当な解体費がかかるため、あらかじめ費用を捻出しておく必要があります。
【必ず長期的な契約になる】
存続期間が50年以上と長いのは、メリットでもありデメリットでもあります。
いったん一般定期借地権を締結してしまうと、地主側から解除できません。
借地人に契約違反などがない限りは、期間中は貸し続けなければいけません。
事業用定期借地権のデメリット
事業用定期借地権のデメリットは、次のとおりです。
- 用途は事業用のみ
- 契約の更新がない
- 途中で事業を中止したときは無駄になる
【用途は事業用のみ】
事業用定期借地権は、事業目的のみに認められており住居の建築はできません。
事業がうまくいかないとしても居住用には変更できず、借地人は事業用定期借地権を解約するしかありません。
【契約の更新がない】
事業用定期借地権にも契約の更新は認められていません。
仮に事業で大きな利益を上げていたとしても、存続期間が満了した場合には建物を解体して返還する必要があります。
ただし、更新は認められていないものの、再契約できるのはほかの定期借地権と同じです。
【途中で事業を中止したときは無駄になる】
事業がうまく進まなかったときには、事業用定期借地権を解除するしかなくなります。
事業用定期借地権を解除するときには、建物を解体し返還しなければいけません。
そのため、事業を中止した場合には、解体費用が無駄になってしまいます。
建物譲渡特約付借地権のデメリット
建物譲渡特約付借地権のデメリットは、次のとおりです。
- 30年以上の長期契約になる
- 契約更新がない
- 借地権が不要になったときの処分に困る
【30年以上の長期契約になる】
建物譲渡特約付借地権は一般定期借地権よりも存続期間が短いとはいえ、30年以上になります。
30年も経過すると建築した建物は古くなってしまうため、買い取りをするかどうか迷ってしまうケースが出てきてしまいます。
【契約更新がない】
建物譲渡特約付借地権も、ほかの権利と同様に更新できません。
更新はできず、再契約はできるというのも変わりありません。
【借地権が不要になったときの処分に困る】
定期借地権の存続期間が長くなると、借地権の付いた土地を売却したいと考える事情ができるケースもあります。
しかし、借地権が付いている不動産はなかなか売却できません。
定期借地権には3つの種類があり内容を理解することが大切
定期借地権とは、期間を定めて土地を貸す方法です。
期間を定めるため更新はできず、土地を返還するときには建築した建物を解体しなければいけません。
定期借地権には3種類あり、それぞれ内容が異なります。
また、内容が異なるためメリットとデメリットも違います。
定期借地権で土地を貸すときには、3種類の権利の内容を理解しておくことが大切です。
自分にあった定期借地権を利用し、土地を貸すようにしましょう。