借地権付き建物を購入するときには、住宅ローンが利用できます。
一般の不動産に比べ、借地権付き建物の住宅ローンは審査が厳しくなります。
住宅ローンの審査がなぜ厳しくなるのか、どう対処したらよいのか理解しておけば、借地権付き建物でも購入が可能です。
本記事では、借地権付き建物の住宅ローン審査が厳しくなる理由、審査の対処法について解説していきますので、借地権付き建物の購入を検討している人はぜひ参考にしてください。
借地権付き建物では住宅ローン審査が厳しくなる理由
借地権付き建物を購入する際、住宅ローンを利用する人は多いはずです。
しかし、借地権付き建物を購入するときには、住宅ローン審査が一般の不動産よりも厳しくなることを知っておく必要があります。
借地権付き建物の購入で住宅ローン審査が厳しくなる理由は、次のとおりです。
- 資産価値が低く見られる
- 契約解消のリスクがある
- 地主の協力が不可欠
住宅ローン審査が厳しくなることを理解すれば、借地権の内容を知ることにも通じます。
住宅ローン審査が厳しくなる理由や、借地権の特性を解説していきますので、住宅ローンを利用し借地権付き建物の購入を検討している人はぜひ参考にしてください。
資産価値が低く見られる
借地権付き建物に対する住宅ローン審査が厳しくなる理由の1つに、資産価値を低く見られることが挙げられます。
住宅ローンは不動産を担保にしてお金を融資しますが、通常の不動産と違い借地権付き建物は土地を担保にできません。
土地は地主の所有であり、他人のものだからです。
金融機関によっては借地権自体の価値を認めてくれるところもありますが、更地価格の半分程度の評価をしてくれるかどうかです。
また、土地は地価の影響を受けて増減するものの安定した価値として担保になりますが、建物は築年数によって減少していくため担保としては土地よりも低く見られます。
借地権付き建物は土地を担保として考慮できず、資産価値が年々減少する建物のみを担保とするしかありません。
担保にする不動産の評価が下がると、住宅ローンの審査が厳しくなってしまいます。
また、仮に住宅ローンの審査に通ったとしても、希望融資金額を削られたりするケースもあるため注意しなければいけません。
契約解消のリスクがある
借地権は「借地権設定契約解消」のリスクがあるため、金融機関は住宅ローンの審査を慎重におこないます。
借地権は通常、地主から解除することはできませんが、借地人が賃料を長期間滞納するなどの借地権設定契約違反をおこなうと解除できてしまいます。
借地権設定契約が解除されてしまうと、土地上の建物は解体して土地を地主に返還しなければいけません。
建物に住宅ローンの抵当権が残っていたとしても、建物を解体して返還する必要があります。
金融機関としては住宅ローンが残っているにも関わらず、抵当権が付いた建物の解体を承諾することはできません。建物を壊すのであれば別の不動産に担保替えするか、住宅ローンの残額を一括返済するかしてもらわないと困るわけです。
しかし、担保替えや一括返済できる人はほとんどおらず、まずトラブルに発展してしまいます。
トラブルに発展しやすい不動産に対しての融資審査はどうしても慎重になってしまい、審査が厳しくなってしまいます。
地主の協力が不可欠
地主から建物に抵当権を設定することに承諾する書面が取得できないと、ほとんどの金融機関は住宅ローンを融資してくれません。
借地権付き建物に抵当権を設定すること自体は、法律で借地人の自由とされており、地主の承諾がなくても抵当権は設定できます。
それではなぜ金融機関が抵当権の設定をする承諾を取得するのかというと、「地主に借地権の解除をさせない」ためであり、承諾書の中には「借地人が地代を滞納したら借地権を解除する前に金融機関に連絡すること」と書かれています。
借地人が地代を払わないと借地権を解除され担保がなくなるため、解除を防止するためにこの項目を記載するわけです。
借地人が地代の滞納を始めたら金融機関が借地人に代わり地代を払い、借地権の解除を防止し担保を維持します。
このような理由があり、金融機関は建物に抵当権を設定する承諾書が地主から取得できないと融資してくれません。
地主によっては抵当権の設定自体を嫌がる人、承諾書を書きたくない人もいるため、審査が厳しくなってしまいます。
借地権付き建物でも住宅ローンが組める金融機関
借地権付き建物の住宅ローン審査は厳しくなるものの、融資を受けることは可能です。
借地権付き建物の住宅ローン審査をしてくれる金融機関は、次のとおりです。
- 銀行
- フラット35
- ノンバンク
各金融機関で借地権付き建物への融資の考え方が異なるため、どのような考えをもって融資してくれるのか理解しておきましょう。
金融機関の考え方がわかれば、借地権付き建物の融資を受けられるかどうかが判断できます。
銀行
銀行は各行の考え方によって、借地権付き建物の住宅ローンの融資をしてくれるかが変わります。
銀行はおおまかに分けて次のような考え方を持っています。
- 地主の承諾があれば融資できる
- 普通借地権であれば融資できる
- 融資不可
上記のような考え方に大別できますが、基本的には融資不可と考えておきましょう。
融資可能な銀行を個人で探すのは大変であるため、住宅ローンの融資を受けるときには借地権を専門におこなっている不動産会社に相談しましょう。
借地権を専門に取り扱っている不動産会社であれば、借地権付き建物の融資をおこなっている銀行を知っており、審査に通過するためのノウハウも持っています。
地主の承諾書を取ることにも長けていますので、安心して任せることができます。
フラット35
フラット35とは、住宅金融支援機構がおこなっている長期間の固定金利型住宅ローンです。
フラット35の場合は、次の要件を満たすことで融資できるケースがあります。
- 敷地に住宅金融支援機構を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定する
※地上権の場合は地上権に抵当権設定、定期借地権・建物譲渡特約付借地権なら登 記された賃借権に質権を設定でも融資可能な場合がある - 定期借地権や建物譲渡特約付借地権の場合、借入期間が通常の借入期間と借地権の残存期間を比較して短い年数が上限となっていること
このような条件であればフラット35でも住宅ローンを借りられますが、敷地に抵当権を設定することを承諾する地主はまずいません。
そのため、地上権か定期借地権か建物譲渡特約付特約の場合しか融資は受けられないと考えたほうがよいでしょう。
なお、フラット35の融資では、借地権取得費用として次の費用が融資対象となります。
- 権利金
- 保証金
- 敷金
- 前払賃料
これらの費用は高額になりがちであるため、フラット35での融資が通る物件を購入するのであれば非常にありがたいサービスといえます。
ノンバンク
ノンバンクは預金や為替などの業務をおこなわず、融資に特化した金融機関であるため、銀行よりも借地権付き建物への融資を積極的におこなっています。
ノンバンクの審査の傾向として、審査の柔軟性が高く、審査スピードも早いという特性があります。
審査に柔軟な分、金利が高い傾向にあるため、ノンバンクで融資を受けるときには気をつけなければいけません。
ただし、ノンバンクだとしても必ず借地権付き建物に融資してくるわけではないため、やはり借地権を専門にしている不動産会社に相談したほうがよいでしょう。
借地権付き建物で住宅ローンの審査に通るためには?
借地権付き建物の住宅ローン審査は厳しいですが、審査に通りやすくするための対処法があります。
審査に通りやすくするための対処法は、次のとおりです。
- 借入金額を抑える
- 地主に協力を仰ぐ
- 専門家に相談する
借地権付き建物を購入するときに住宅ローンの利用を考えているのであれば、対処法を理解して住宅ローンを借りやすくしておきましょう。
借入金額を抑える
金融機関の審査に通りやすくさせるには、頭金を多く入れて住宅ローンの借入金額を減らすのが効果的です。
借地権付き建物は担保評価が低く見られてしまいますが、担保評価に近い借入金額であれば金融機関も貸し倒れを防ぐことが可能です。
また、借入希望者が車のローンなどほかから融資を受けている場合、その融資に加えて住宅ローンを組むと返済不能に陥る可能性が高くなります。
そのため、住宅ローンを申し込むときに、他の借り入れを返済してから申し込むと審査がとおりやすくなります。
地主に協力を仰ぐ
地主から抵当権設定の承諾書が取れるケースなら融資をしてくれる金融機関があるため、地主に協力してもらい承諾書が取れる準備をしておきましょう。
金融機関によっては抵当権の承諾書が取得でき、借地権の解除を防止できる状態になれば融資してくれるところがあります。
もし分譲会社が分譲している借地付き建物を購入する場合は、承諾書を用意してくれる地主か分譲会社に確認しましょう。
分譲会社の物件であれば、分譲会社が事前に地主に対して承諾書を書くように説明してくれているケースもあります。
事前に地主に説明してある借地権付き建物であれば、融資を受けられる範囲が広がります。
専門家に相談する
借地権付き建物を購入するときには、必ず借地権の専門家に相談して進めていきましょう。
借地権自体、内容を把握するのが難しい権利であるため、専門家に任せておくと安心して進められます。
住宅ローンも通りやすい金融機関や、通りやすくするための折衝方法も熟知しているため借り入れもスムーズに進みます。
自分で金融機関を探すことや、地主から承諾書を取得することなどは非常に難しいため、借地権の専門家に相談し借地権付き建物の購入を進めていきましょう。
借地権付き建物で住宅ローンを組むときによくあるトラブル
借地権付き建物を住宅ローンで購入する場合、借地権特有のトラブルが起きるケースもあります。
たとえば、次のようなトラブルが起きるときもあります。
- 地主からの承諾が得られない
- 資産価値が低いと判断される
借地権付き建物を住宅ローンで購入するときにどのようなトラブルが起きやすいか把握しておけば、トラブルを未然に回避できます。
トラブルの内容を理解し、借地権付き建物のスムーズな売買をおこなっていきましょう。
地主からの承諾が得られない
地主から抵当権設定の承諾書が取得できると思い込み住宅ローンの手続きを進めてしまうと、取得できないときにトラブルになってしまいます。
抵当権設定の承諾書を取得するには地主との関係を保ち、なぜ法律で必要のないとされている抵当権設定の承諾書が住宅ローンの融資に必要なのか、きちんと説明しておかなければいけません。
理由を説明するには、借地権や金融の高度な知識が必要であるため、説明は専門家に任せたほうがよいでしょう。
専門家の話を地主に聞いてもらえるような状態にしておくことが大切です。
また、承諾書が必要ない金融機関を調査しておけば、承諾書の取得のトラブルを防ぐことができます。
地主との関係を良好に保ちつつ、承諾書が必要ない金融機関を探しておきましょう。
資産価値が低いと判断される
借地権付き建物は資産価値が低いと判断され、住宅ローンをなかなか借りられません。
借地権付き建物は土地を担保にすることができず、融資の審査が厳しくなります。
しかし、借地権付き建物に対して融資をおこなっている金融機関もあるため、どの金融機関が融資してくれるのか確認しておくことが大切です。
借地権付き建物を購入するときには、融資してくれる金融機関を探しつつ購入の話を進めていきましょう。
借地権付き建物を住宅ローンで購入するときには専門家に相談しよう
借地権付き建物を住宅ローンで購入する場合、金融機関の審査は厳しくなってしまいます。
借地権付き建物は土地を担保にできず、借地権は解除されてしまう恐れがあります。
そのため、借地権を担保と考えるのは難しく、住宅ローンの審査は厳しくなるわけです。
しかし、借地権付き建物にも融資してくれる金融機関はあります。
融資に条件が付くことも多いため、借地権の専門家に相談しつつ進めていきましょう。
借地権の専門家であれば、住宅ローンの審査に通りやすくする方法を知っているためスムーズに審査が進むことでしょう。