定期借地権には種類があり、それぞれの定期借地権には期間が設定されています。
しかも、定期借地権の内容によって期間に違いがあったり、1つの定期借地権の中に期間による違いがあったりします。
定期借地権を設定するときには、期間の違いを理解しておかないと正確な事業計画を建てることはできません。
本記事では定期借地権の種類や内容・期間の違いについて解説していきますので、定期借地権の設定を検討している人はぜひ参考にしてください。
定期借地権の種類は?
定期借地権にはいくつかの種類があり、それぞれの内容は異なります。
定期借地権の種類は、次の3つです。
- 一般定期借地権
- 事業用定期借地権
- 建物譲渡特約付借地権
3つの定期借地権は内容が違うため、定期借地権を設定するときには内容を理解しておかないと事業計画にあった権利が設定できません。
どの定期借地権と事業内容があっているのか確認し、借地権を設定していきましょう。
一般定期借地権
一般定期借地権は、借地上の建物の用途制限がなく存続期間も長いため、土地活用がしやすい定期借地権です。
一般定期借地権は更新できず存続期間が満了した場合、建物を解体し更地にしたうえで地主に土地を返却しなければいけません。
かりに借地人も地主も契約更新を望んだとしても、一般定期借地権を設定している場合は一旦借地権設定契約を終わらせ、再度一般定期借地権を締結するなどの再契約が必要です。
また、一般定期借地権には建物買取請求権がないため、借地人は存続期間が満了したとしても建物は地主に買い取ってもらえず、必ず解体して返還しなければいけません。
また、一般定期借地権には建物の用途制限がないため、居住用建物でも事業用建物でも建築が可能です。
なお、一般定期借地権の設定契約をするときには、公正証書などの書面で契約をしなければ効果が発生しません。
借地借家法によると公正証書「など」とされているため、公正証書で契約する必要はなく通常の書面での契約で効力が発生します。
事業用定期借地権
事業用定期借地権は、事業をおこなうことを前提として設定する定期借地権です。
事業用定期借地権を設定した場合、事業用の建物しか建築できず居住用の建物は建築できません。
賃貸マンションや賃貸アパートは事業用ではなく、居住用扱いになるため建築できません。
かりに借地人がマンション経営など事業として考えていたとしても、居住用建物とみなされるため注意しましょう。
また、事業用定期借地権の設定契約をするときには、必ず公正証書で作成しなければいけないとされています。
公正証書を作成するときには公正証書の作成費用を払わなければならず、作成費用は10年分の地代の2倍の額を基準として次の表の費用を払う必要があります。
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
なお、一般的には借地人が公正証書作成費用を出すことも多いですが、公正証書作成費用の負担者は法的に決まっておらず、借地人と地主の話し合いで費用負担を決定します。
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権は、一般的借地権や普通借地権などほかの借地権に建物譲渡特約を付けた借地権です。
建物譲渡付特約とは、借地期間が30年以上経過したときに、地主は借地人の建物を買い取れるという特別な決めごとです。
地主が建物を買い取れば、土地と建物が地主の所有となり借地権は消滅します。
一般定期借地権に建物譲渡特約を付けた場合、本来一般定期借地権の借地期間である50年以上土地を貸さなければいけませんが、30年経過後に建物を買い取って借地権を消滅させることができます。
つまり、建物を買い取ることで貸さなければいけない借地期間を短縮できるわけです。
建物譲渡特約を付けたとしても、建物を必ず買い取りする必要はなくあくまでも任意で買い取るかどうかを決められます。
時間経過によって建物の状態が悪くなり、買い取っても意味がないという事態も想定されるからです。
なお、建物を買い取らなかった場合、譲渡特約を付けた借地権の契約内容に従う必要があります。
たとえば、一般定期借地権に建物譲渡特約を付けたものの建物の買い取りを実行しなかった場合、一般定期借地権の存続期間まで土地を貸し続けなければならず、30年では借地権を解除できないということです。
定期借地権の種類によって存続期間が異なる
3種類の定期借地権は内容が異なり、借地権の存続期間も異なります。
それぞれの定期借地権の存続期間の違いを理解し、どの定期借地権を設定すればよいのか判断できるようにしておきましょう。
一般的借地権
一般定期借地権の借地権の存続期間は、50年以上で設定しなければいけません。
一般定期借地権は借地上の建物の用途を制限せず50年以上貸すことになるため、借地人にとってはさまざまな事業を立てられるのがメリットです。
50年の期間があれば事業用としてだけではなく、居住用としても利用が可能です。
しかも、普通借地権とは違って借地権の更新はできず一定年数が経過すれば土地は更地で返還されるため、いずれ土地を自分で使いたい、子どもに土地を使わせてあげたいという希望もかなえられます。
もちろん一般定期借地権の期間が満了しても借地人と地主が引き続き土地を借地したいと考えれば、更新はできなくても再契約も可能です。
事業用定期借地権
事業用借地権の借地権の存続期間は、10年以上50年未満で設定しなければいけません。
事業用定期借地権の存続期間は10年以上30年未満と、30年以上50年未満で契約の内容が異なります。
期間の違いによる内容の違いは、次の表のとおりです。
事業用定期借地権の存続期間 | 内容 |
10年以上30年未満 | ・期間の更新はできない・建物買取請求はできない |
30年以上50年未満 | ・特約により更新なしにできる・特約により建物買取請求なしにできる |
10年以上30年未満の場合、短期で土地を貸すことを前提にしているため存続期間の更新や建物買取請求ができません。
しかし、30年以上50年未満の場合は長期で土地を貸す前提になっているため、特約をつけない限り、原則存続期間の更新と建物買取請求が借地人に認められます。
そのため、更新しないことや建物買取請求しないと明記しなければ、普通借地権に近い権利になってしまうため注意しなければいけません。
なお、建物買取請求権とは、地主が借地期間を更新しなかったり、借地人が建物の譲渡を地主に相談しても承諾してくれないときに、借地人が地主に建物を買い取ってほしいと請求する権利です。
建物譲渡特約付借地権
借地権に建物譲渡特約を付ければ、借地してから30年以上経過したときに地主が建物を買い取って借地権を消滅させることが可能です。
借地権にはそれぞれ存続期間が決まっていますが、建物譲渡特約を付けることで存続期間を短縮させたり、借地権を消滅させたりできます。
たとえば、普通借地権を設定すると借地人に更新が認められているため、土地がなかなか返還されません。
しかし、普通借地権に建物譲渡特約を付ければ借地期間30年経過すれば、地主は借地人の建物を買い取って借地権を消滅させることが可能です。
建物を買い取るには大きな資金が必要なものの、借地権と途中で解除する可能性があるなら建物譲渡特約付借地権を設定しておくとよいでしょう。
定期借地権のメリット【種類別】
定期借地権はそれぞれで内容が異なるため、メリットも異なります。
各定期借地権のメリットを理解し、どの定期借地権を設定するのか決めていきましょう。
一般定期借地権のメリット
一般定期借地権のメリットは、長期契約ができることです。
一般定期借地権の存続期間は最低でも50年であり、長期的に安定した地代が入ってきます。
借地権の存続期間は借地人との交渉で決まるため、50年より長い期間を設定することも可能です。
また、更新は認められないため、土地が更地で返還されるのもメリットです。
かりに建物を買い取りするとなると買取費用がかかるうえに、解体費用も払わなければいけなくなるケースもあります。
建物が無料で解体され戻ってくるため、地主の負担が減ります。
事業用定期借地権のメリット
事業用定期借地権は短期でも長期でも貸せるため、地主の考え方にあわせられるのがメリットです。
早く土地を返還してほしいのであれば、更新も建物買取請求もない10年〜30年未満の契約を締結し、長期的な収入を得たい場合は30年〜50年未満の契約をして更新してもらえます。
細かな期間を設定できるため、事業の内容にあわせて計画的な契約がおこなえます。
建物譲渡特約付借地権のメリット
建物譲渡特約付借地権のメリットは、借地権の期間を短縮したり、借地権を消滅させたりできることです。
借地権に建物譲渡付特約を付けておけば、借地期間が30年経過したときに地主は建物を買い取ることができます。
借地期間がかりに50年だったとしても30年の経過で建物が買い取れるため、借地にしたものの早く返還してほしい理由ができたときに便利です。
ただし、建物をいくらで買い取るかは、借地人と相談になることには注意しましょう。
30年経過すると借地人も地主も状況が変わっていたり、相続が発生してしまったりしているケースもあります。
そのため、話し合いが難航してしまうこともあります。
定期借地権のデメリット【種類別】
定期借地権には多くのメリットがありますが、デメリットもあります。
定期借地権を設定するときには、どのようなデメリットがあるのか理解してから進めていきましょう。
一般定期借地権のデメリット
一般定期借地権のデメリットは契約の更新がなく、契約満了時には更地で戻ってくることです。
契約の更新がないことや、更地で戻ってくることにはメリットだけでなくデメリットもあることには注意しなければいけません。
たとえば、地主が借地権を更新したくても借地人が契約更新を希望しない場合、一般定期借地権は解除されてしまいます。
また、地主が借地人の建築した建物を使用したいとしても、契約上は更地になって返還されてしまいます。
ただし、期間満了しても借地人が借地を続けたいと考えている場合は、一般定期借地権を再契約することは可能です。
事業用定期借地権のデメリット
建物譲渡特約付借地権のデメリットは、建物を買い取らなければいけないことです。
建物譲渡特約を付ければ借地期間が残っていたとしても、30年を経過した時点で建物を買い取って借地権を消滅させられます。
しかし、建物を買い取るには資金が必要となり、今まで受け取った地代よりも大きな支出になる可能性があります。
また、建物を買い取った後、建物が不要になった場合は地主が自費で解体しなければいけません。
建物譲渡特約を付けた結果、費用負担が大きくなるケースもあることには注意しましょう。
定期借地権の設定時には期間と内容の違いを把握することが大切
定期借地権には「一般定期借地権」・「事業用定期借地権」、「譲渡特約付借地権」があり、それぞれ借地権は期間や内容が異なります。
定期借地権を設定して土地を借りるときには期間や内容の違いを理解し、事業計画にあった借地権を選択しなければいけません。
たとえば、長期的に安定した収益を得たい場合は一般定期借地権、短い期間しか借地にしたくない場合は10年以上30年未満の事業用定期借地権を設定するという形です。
土地をうまく活用するときには、まず定期借地権の内容を理解してから土地を貸すようにしていきましょう。