マイホーム探しをするなかでいろいろな物件情報をみて検討すると思いますが、なかには土地の権利が所有権ではなく借地権の物件もあります。
借地権は、建物を所有する目的で他人の土地を借りる権利であり(借地借家法1条)、土地の所有者である地主と借地人の間で借地契約を結び、土地の賃借料を支払います。
また、借地権には、契約時に設定した期間満了時に契約更新できる普通借地権(借地借家法3条以下)と契約の更新がない定期借地権(同22条以下)があります。
普通借地権は契約が更新される限り土地を利用し続けることができますので、定期借地権より所有権に近い権利といえます。
マンションを探すなかで、この定期借地権付きマンションの情報を目にすることがあると思います。
ただ、一般の所有権のマンションと比べると、予算的には抑えることができる定期借地権付きマンションですが、買うべきでないと言われることもあります。
この記事では、定期借地権付きマンションと一般のマンションの違い、買ってはいけないと言われる理由などについて解説します。
定期借地権付きマンションとは?
定期借地権付きマンションは土地が所有権のマンションと何が違うのでしょうか。その特徴について解説します。
敷地利用権が定期借地権のマンション
定期借地権付きマンションは、敷地利用権が定期借地権のマンションです。敷地利用権とは土地を利用する権利で、マンションを購入する際、建物だけでなく敷地を利用する権利を購入しています。
ほとんどのマンションは、敷地利用権として土地の所有権を建物と同時に購入しますが、定期借地権付きマンションは、土地を借りる権利(定期借地権)を購入します。
また、マンションの場合、購入した区分所有者が単独で所有する居住部分(専有部分)と敷地を含めた廊下やエントランスなど区分所有者全員で共有する部分(共用部分)に分かれ、区分所有者で管理組合を組織し、管理・運営を行います。
つまり、定期借地権付きマンションでは、敷地を利用する権利を他の区分所有者と共有する形になります。
期間満了時に更新できない
定期借地権付きマンションは、敷地の利用について、土地賃貸借契約で定めた期間が満了すると更新できません。
定期借地権は、1992年の借地借家法施行にあわせてできた権利です。それまでの旧借地法における旧法借地権では、一旦貸した土地は更新が続く限り戻ってこず、地主が土地を貸すことを躊躇し土地活用がすすまないという問題を抱えていました。
そこで、借地借家法では、土地所有者である地主の立場にも配慮し、契約期間満了時に契約の更新がなく、土地が確実に返還される定期借地権が規定されました。
定期借地権は、期間満了に伴って土地を更地にして返還する必要があります。そのため、契約期間満了に向けて資産価値は下がりますので、資産性という意味では一般の所有権のマンション、普通借地権のマンションと比べて低くなります。
その一方、契約期間が明確に決まっていますので、一時的な居住環境の確保や住み替えなどライフプランによっては計画的に利用できることもあります。
定期借地権付きマンションは買ってはいけないと言われる理由
定期借地権付きマンションを検討するなかで買うべきではないといわれることがあります。どういった理由でそのように言われるのでしょうか。
資産価値が低くなりやすい
1つめの理由は、「資産価値が低くなりやすい」ことです。
契約の更新がない定期借地権では、期間満了に向けて資産価値は下がっていきます。マンションの場合、税法上の耐用年数は47年とされ、維持管理をしっかりすれば実際の耐用年数は100年以上ともいわれます。そのため建物の価値は、木造の戸建て住宅等と比べても下がりにくいといえます。
ただ、定期借地権付きマンションの場合、建物の利用価値や資産価値が残されても、敷地を利用する権利が契約期間満了とともになくなってしまいます。
そのため、建物の価値とは関係なく資産価値が下がりやすいといえるでしょう。
また、資産価値が低いと、契約期間中売却をするとなった場合、希望する金額での売却、買取りが難しいこともあります。
住宅の購入理由として、家賃の掛け捨てはもったいない、資産を持ちたいという方も少なくありません。そういう人資産性を重視する人は特に、定期借地権付きマンションは買わない方がよいとなりやすいといえます。
参照元:主な減価償却資産の耐用年数表(国税庁)
参照元:「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書取りまとめ後の取組紹介(国土交通省)
地代が高くなりやすい
2つ目の理由は、「地代が高くなりやすい」ことです。
定期借地権付きマンションは、土地を借りるための賃借料(地代)が必要です。
地代の額は、周辺の取引相場を含めた土地価格や固定資産税評価額、路線価等をもとに決められ、管理費や修繕積立金などとあわせランニングコストとして負担しなければなりません。
地代は経済状況の変化や固定資産税上価額、物価指数などの変動に応じて改定されることもあり、状況によって増額されることもあります、
また、土地を所有しない定期借地権付きマンションでは、借地人は建物の固定資産税を負担し、土地の固定資産税は地主が負担します。
この点、地主は借地人から受領する賃借料収入から固定資産税や土地の維持管理のための費用などを支払います。
地主の土地活用という意味では、借地としての需要が高い地域であればあるほど地代の相場は高くなります。
そのため、土地の固定資産税の額以上の地代が設定されることが多くなります。
このように地代が継続的にかかる、途中地代が高くなる可能性もあることから、定期借地権付きマンションを買わない方がいいという人もいるでしょう。
解体積立金がかかる
3つ目の理由は、「建物の解体積立金がかかる」ことです。定期借地権付きマンションは、期間満了時に更地にして返還する必要がありますので、建物の解体費用として解体費用積立金を負担しなければなりません。そのため一般のマンション以上に維持費がかかりやすいといえます。
なお、定期借地権付きマンションの主な維持費をまとめると以下のようになります。
- 管理費
- 修繕積立金
- 固定資産税(建物部分)
- 地代(土地賃借料)
- 解体積立金
一般定期借地権の存続期間は50年以上で設定されますが(借地借家法22条)、契約期間中、これらの維持費がかかることになります。
一般的に都市部の一等地に建てられることも多い定期借地権付きマンションでは、それなりのコスト負担が発生すると考えていたほうがよいでしょう。
老後に住めない可能性
4つ目の理由は、「老後に住めない可能性がある」ことです。
契約期間の満了で借地契約は終了し建物を取り壊しますので、住み替えが必要となります。契約期間は50年以上と長期にわたりますが、人生100年時代といわれるなか老後を住み慣れたマンションで過ごすことができない可能性もあります。
また、定期借地権付きマンションは、途中売却しようと思っても、なかなか買い手が見つからない、もしくは売却金額が著しく低くなる可能性もあります。
一般の土地所有権のマンションと比べて市場で流通する量が少ない借地権付きマンションを検討する人は少なく、それに加えて、購入して住める期間が限られる定期借地権となると、なかなか買い手が見つからない場合もあるでしょう。
数十年先のことを予測することは難しいですが、老後の家族構成や健康面などを考えたとき、住み替え等が必要になる可能性のある定期借地権付きマンションは買わない方がよいと考える人もいます。
住宅ローンの審査が厳しくなりやすい
5つ目の理由は、「住宅ローンの審査が厳しくなりやすい」ことです。
マンションを購入するうえで資金計画を考える必要がありますが、多くの人は住宅ローンを利用します。
住宅ローンを利用するには審査を通す必要がありますが、収入面や健康面以外に物件の担保価値も審査対象となります。
この点、定期借地権付きマンションは、契約期間の満了に向けて資産価値が減少していくことから、担保評価として審査が厳しくなったり、短い返済期間などの契約条件がつく場合もあります(返済期間が短くなると、毎月のローン返済額は増えます)。
築年数が経過したマンションであるほど、住宅ローンが組みにくくなります。
マンション管理の問題が生じる可能性
6つ目は、「マンションの管理に問題が生じる可能性がある」点です。
一般的に、マンションは築年の経過に伴い、長期修繕計画にしたがって定期的な大規模修繕や必要に応じたメンテナンスを行います。
この点、定期借地権付きマンションは、60年、70年といったスパンで土地を借りますが、最終的には建物を取り壊し土地を返還する必要があります。
築年の経過がすすむほど修繕も必要となりますが、定期借地権付きマンションの場合、契約期間の終了に近づくにしたがって、区分所有者から修繕やメンテンナンスを行う同意が得られにくくなる可能性があります。
つまり、取り壊すことが前提の建物に、維持管理のコストをかけようという区分所有者が少なくなり、管理組合の合意形成が難しくなる可能性があります。
管理が十分に行われないマンションだと生活環境に影響するかもしれません。
定期借地権付きマンションは利点もある?
ここまで定期借地権付きマンションを買ってはいけないといわれる理由について解説しましたが、一方で利点もあります。
購入コストが安く済む
1つ目の利点としては、「購入コストが安くできる」ことです。
定期借地権付きマンションは、敷地利用権が所有権ではなく賃借権になりますので、土地購入費用はかかりません。
一等地に建つことも多い定期借地権付きマンションを、土地建物から購入しようとすると、なかなか資金計画上厳しい場合もあるでしょう。
この点、定期借地権付きマンションは、所有権のマンションより3割程度安く購入することができますので、好立地の物件でも購入資金を抑えることができます。
スーモやアットホームなどポータルサイトで検索するなかで、探している条件の相場や他の同条件の物件と比べて、販売価格がかなり低く設定されているマンションをみかけることがあります。
そういったマンションは何らかの問題を抱えるのではと思われるかもしれませんが、物件自体には問題がなく、ただ、敷地利用権が賃借権や定期借地権のものであったりします。
購入価格を抑えるために借地権付きのマンションも積極的に検討したい場合は、検索条件で所有権以外の賃借権、地上権、定期借地権などを指定することで探すことができます。
好立地の物件が多い
2つ目の利点としては、「好立地の物件が多い」ことです。
東京カンテイの調査結果によると、定期借地権付きマンションのストック数は、東京をはじめ、神奈川、埼玉、千葉、大阪、愛知、兵庫といった都市圏に集まっています。
こういったエリアの好立地でまとまった広さの土地を所有する地主は、希少性の高い土地として手放したくない人もいます。
そのため、土地を売却せず、所有したまま活用する手段として定期借地権付きマンションの分譲用地として利用されているケースがあります。
駅前の交通・生活利便性が高いうえ、住環境としても住みやすい立地条件が良い定期借地権付きマンションを、資金的に抑えながら購入できる点はメリットといえます。
参照元:「定期借地権付きマンション」のストック数について調査・分析(東京カンテイ)
まとめ
定期借地権付きマンションについて解説しました。買ってはいけないと言われる一方、利点もあります。
〇定期借地権付きマンションを買ってはいけないと言われる理由
- 資産価値が低くなりやすい
- 地代が高くなりやすい
- 解体積立金がかかる
- 老後に住めない可能性
- 住宅ローンの審査が厳しくなりやすい
- マンション管理の問題が生じる可能性
〇定期借地権付きマンションの利点
- 購入コストが安く済む
- 好立地の物件が多い
定期借地権付きマンションは、所有権のマンションと比べ購入価格が抑えられますが、その反面最終的な出口が見えていることから、資産としても、老後の生活環境としても、購入者が検討しなければいけないことが多いマンションといえます。
また、コスト面についても、一般的な物件より割安で購入できても、長期間の維持費の負担を考えたときのトータルコストを検討する必要があるでしょう。
新築か中古か、購入するタイミングはいつかによって、予算も住める期間も変わります。購入後のライフプランなどもしっかりと考え判断してください。