借地権付きマンションを購入するときには、借地権のメリットやデメリットを理解したうえで購入しなければなりません。
内容を理解せずに購入してしまうと、通常のマンションとの違いにより後悔してしまう可能性もあります。
本記事では、借地権付きマンションとはなにか、購入するメリットやデメリット、注意点など解説していきますので、借地権付きマンションの購入を考えている人はぜひ参考にしてください。
借地権付きマンションとは?
マンションには土地を不動産会社が購入して建築されたものだけでなく、借りた土地上に建築されたマンションもあります。
しかし、通常マンションと借地権付きマンションとでは全く違う性質を持っているため、違いを理解してから購入するようにしましょう。
借地権付きマンションとはどのようなマンションなのか、どのようなメリットやデメリットがあるのか解説していきます。
土地が所有権になっているマンション
土地が所有権になっているマンションは、部屋を購入すると同時に土地の所有権も取得します。
部屋の所有者は土地の所有権も持っているため、借地権のように土地を返還する必要もなく、建物を解体して更地にする時期が決められているわけでもありません。
ただし、土地はマンションの住人全員が共有して所有しているため、個人が自由に使えるというわけでもないのです。
マンションで管理組合を設立し、マンションごとの決め事したうえで、土地の使用できる方法を決めていきます。そして、決めた使用方法に従って土地を利用していきます。
売却するときも自分の所有している部屋と土地の持ち分を売却するのに、ほかの人の承諾を得る必要はない一方で、借地権付きマンションの部屋を売却するときには、地主の譲渡承諾を取得する必要があります。
契約期間は50年以上
借地権付きマンションは一般定期借地権を利用して建築されるため、契約期間は最低でも50年です。
一般定期借地権とは、借地の契約期間を50年以上に定める代わりに、次の特約を付加できる借地権です。
- 借地の契約が満了しても更新できない
- 建物を再建築しても契約の延長は認めない
- 契約期間が満了しても建物の買取請求は認めない
借地の契約期間を更新できない権利であるため、期間満了時には借地人が建物を解体し土地を返還しなければいけません。
つまり、借地権付きマンションが建築されてから借地期間が満了したときには、住人全員マンションから退去し、積み立てた管理費や修繕積立金によってマンションを解体する必要があります。
しかし、一般定期借地権は借地の契約期間が50年以上と長いため、マンションで長期的に生活し続けるという目標は達成が可能です。
そのため、近年では借地権付きマンションが分譲されるようになり購入者も多くいます。
借地権付きのマンションのメリット
借地権付きマンションを購入することには、メリットが多くあります。
借地権付きマンションを購入するメリットは、次のとおりです。
- 土地代がかからない
- 土地に関する税負担が軽い
- 立地の良い場所が多い
どのようなメリットがあるのか把握し、借地権付きマンションの購入を検討していきましょう。
土地代がかからない
借地権付きマンションは土地を借りているため、分譲会社が土地を購入しなくてすみます。
そのため、借地権付きマンションの分譲価格は、所有権のマンションの価格よりもかなり低く設定されています。
買い手にとってマンションを安く購入できるのは、借地権付きマンションの大きなメリットです。
また、分譲価格が安くなれば、追加オプションに費用を払いやすくなるため生活水準を上げることも可能です。
このように浮いた分のお金を別に使える点も、借地権付きマンションのメリットといえます。
土地に関する税負担が軽い
借地権付きマンションであれば、土地に関する税負担が軽くなります。
土地を所有していると毎年固定資産税が課税され、所有している土地が都市計画法上の都市計画区域内にあると毎年都市計画税も課税されてしまいます。
しかし、借地権で土地を借りている場合、土地の固定資産税も都市計画税も課税されません。
ただし、建物はマンションの部屋の所有者であるため、建物の固定資産税や都市計画税は課税されることに注意しましょう。
また、土地を取得しないため、土地の不動産取得税もかかりません。
不動産取得税は、固定資産税評価額が高くなるほど納税額も増えます。
マンションのように立地の良い場所だと不動産取得税も高くなりがちですが、土地は取得しないため、土地の不動産取得税は課税されません。
立地の良い場所が多い
借地権付きマンションの特徴として、立地の良い場所の土地を利用できるケースが多いことも挙げられます。
都心部の開発はかなりの地域で進んできてしまい、土地を購入しマンションを建築するような土地は少なくなってきています。
しかし、土地を売却したくないという地主が所有する土地は、いまだ多く残されているのが現状です。
地主も利便性の良い都心部の土地は、手放したくないと考えているのが理由の1つです。
しかし、売却ではなく借地であれば地主がマンションを建築することを許可してくれることもあります。
借地権付きマンションが通常のマンションでは建築できない立地の良い場所で販売されることがあるのは、このような理由があるからです。
借地権付きのマンションのデメリット
借地権付きマンションにはメリットが多いものの、デメリットもあります。
借地権付きマンションを購入するデメリットは、次のとおりです。
- 地代がかかる
- 前払い賃料は住宅ローン控除の対象外
- 将来住み替えが求められる
- 借地権の売却は所有権に比べ難しい
借地権付きマンションを購入するときには、デメリットもどう考慮するかしっかりと知った上で判断しましょう。
地代がかかる
土地を借りた場合、地代が毎月かかってしまいます。
一般定期借地権で土地を借りる場合、借地期間は50年以上になります。
そのため、ランニングコストとして50年分の地代の支払いを考慮しなければいけません。
地代を払って借地権付きマンションを購入したほうがよいのか、通常のマンションを購入したほうがよいのか、しっかりと考慮しておく必要があります。
地代を払っても金銭的な負担が少ないというのであれば、借地権付きマンションを検討するのもよいでしょう。
また、地代の合計金額だけでなく、月々払いの費用として高いのかどうか判断しなければいけません。
住宅ローンを借りてマンションを購入する場合、月々返済していく必要がありますので、住宅ローンの返済金額と地代、管理費・修繕積立金の合計金額を支払っていけるか確認しておくことが大切です。
前払い賃料は住宅ローン控除の対象外
定期借地権付きマンションの購入時に必要な前払い家賃は、住宅ローン控除の対象外です。
前払い賃料とは、定期借地権の設定にともない支払う賃料であり、定期借地権の期間すべての地代をまとめて払う場合と、一部の地代を払う場合があります。
また、住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して不動産を購入した場合、毎年末の住宅ローン残高に応じた金額が所得税から引かれる制度です。
しかし、前払い賃料を住宅ローンで払ったとしても、その分に関しては住宅ローン控除から差し引かれてしまいます。
前払い家賃のほかにも、仲介手数料や印紙代、不動産取得税、登録免許税などが住宅ローン控除の対象外です。
住宅ローン控除の対象とならない費用の種類は多いため、どの費用が認められるのか税務署や不動産会社に確認しておくことも大切です。
将来住み替えが求められる
借地権付きマンションに住むと、将来住み替えが求められます。
借地権付きマンションは、一般定期借地権を利用して建築されています。
一般定期借地権は借地期間50年で設定されているケースがほとんどで、期間満了しても更新できません。
そのため、50年経過すると住み替えが必要になり、ちょうど子どもが大人になる世代に住み替えをしなければならなくなります。ですので借地権付きマンションは、子どものために残す財産とは言いづらいでしょう。
また、借地権の残存期間が5年など少なくなってくる時点で買い手が購入する意味もなくなってくるため、期間満了直前には資産価値も下がっていくと考えておく必要があります。
借地権の売却は所有権に比べ難しい
借地権のマンションは、所有権のマンションに比べ売却が難しい傾向にあります。
借地権の場合、借地期間が満了してしまったときには更地にして返還しなければいけません。
残りの期間が少なくなってくると、買い手が住める年数も減ってしまうためなかなか売却できません。
また、先述したように資産価値も下がってしまうため、なおのこと買い手からすると購入する理由がなくなってしまいます。
もし借地の残存期間が短くなってから売却するのであれば、不動産会社に買い取ってもらうとよいでしょう。
中古の借地権付きマンションを購入する際の注意点
中古の借地権付きマンションを購入するときには、中古ならではの注意点があります。
中古の借地権付きマンションを購入する際の注意点は、次のとおりです。
- 住宅ローンの審査が厳しくなる
- 建物の建て替えなどは地主に相談する必要がある
中古の借地権付きマンションは、注意点を理解してから購入を進めていきましょう。
住宅ローンの審査が厳しくなる
中古の借地権付きマンションを購入するときには、住宅ローンの審査が厳しくなります。
住宅ローンは担保にする不動産の価値の高さにより、審査が甘くなったり厳しくなったります。
当然、不動産の価値が低ければ、住宅ローンの審査は厳しくなるため申込時に注意しなければいけません。
借地権付きマンションは借地権の残存期間によって資産価値が減っていくため、残りの年数によっては担保価値がないと判断されてしまいます。
担保価値がないと判断されると、住宅ローンの審査に通過しなくなってしまいます。
また、残存期間が少なくなったときに住宅ローンが借りられたとしても、返済条件として返済期間を短く設定されてしまうケースもあるため気を付けなければいけません。
建物の建て替えなどは地主に相談する必要がある
借地権の建物の建て替えは、地主に相談し再建築の許可を取得しなければいけません。
マンションが災害などで損壊してしまった場合、通常、修繕積立金や融資を利用し建て替えします。
しかし、借地権付きマンションを建て替えるには、地主の許可が必要です。
地主が許可をしなければマンションを建て替えられません。
なお、定期借地権付きマンションの部屋を売却するときにも、地主の承諾が必要になります。
地主に無断で売却してしまうと借地権設定契約違反となり、契約を解除されるおそれもあるため注意するようにしましょう。
借地権付きマンションを購入する前にはメリットやデメリットを理解しよう
借地権付きマンションとは、一般定期借地権を利用して建築されたマンションです。
借地権付きマンションにはメリットやデメリットがあるため、内容を理解してから購入を検討しましょう。
たとえば、通常のマンションよりも安く購入できたり、土地の固定資産税がかからなかったりするメリットがあります。
その反面、毎月地代がかかる、住宅ローンの審査が厳しくなるケースもあることがデメリットです。
このように通常のマンションとの違いがあるため、借地権付きマンションの特徴を把握してから購入するか判断していきましょう。